YOSHI WADA Off The Wall
NYCの60年代アヴァンギャルド/
『ますます加速するヨシワダ探検。今回は最初のLP『ラメント・フォー・ザ・ライズ・アンド・フォール・・・』から3年後にリリースされた、これも今ではレアな『オフ・ザ・ウォール』の復刻である。手がけたのはヨーロッパ・フリージャズの中心的レーベルであるドイツのFree Music Production (FMP)。「なんでFMP?」と思った人も多いようだが、前回の「ジ・アポインテッド・クラウド」の3年前に演奏されていることを考えれば、彼のスタイルは実験的なドローン演奏から、すでに集団的な即興演奏にシフトしていた時期だったのである。 それにしてもこの派手でにぎやかな演奏!『ラメント・フォー・・・』のB面で聴かれる濃密なバグパイプのドローンは、短い反復を延々とタレ流す狂躁的没入演奏に変貌し、40分ぶっ通しで続く。ティンパニが土俗的な楔を打ち込む。この、あくまで「演奏」に重心があるこの録音の後、もともと持っていた空間への興味からインスタレーションへ発展、そしてあの「ジ・アポインテッド・・・」で完成を迎える。整然と配置された「バグパイプ状楽器」のジャケ写真は、まさにその過程を示したものだ。その到達点に向かうパワーが全開でとどろく、これまた超絶ドラッギー傑作なのである。 エム・レコードが私財を投げ打って手がけたこの「ヨシワダ計画」。実は本当の最終兵器を放つ前に、この作品が急きょ出されることになった。ワダ氏がノリ気なのである。単なる名盤復刻にとどまらない、作家の創作の隠された源泉に分け入る孤高の作業と、それに応じる作家の新たな意欲。ありそうで滅多にない理想的なコラボレーションである。(井部 治/オメガポイント)』 |