近日5thアルバムのリリースを控えているとのことで、2008年から2023年までに発表された、ヒップホップからジャズ、ソウル、ポップスまで様々なジャンルの名曲をカヴァーした楽曲がコンパイルされています。Bob Jamesの超名曲ブレイクビーツ 「Nautilus」のカヴァーをオープナーに、ボトムヘビーなドラムにアレンジしたKhruangbinの名曲 「Maria También 」、Royce the 5’9 のJディラ・プロデュース「Let's Grow」や、 50cent「PIMP (Version)」、The Notorious B.I.G.やWarren Gサンプリングで馴染みのメロウ・クラシック「Juicy Fruit」(sample_2)、Gang Starrの「All For The Cash」(sample_3)といったHIPHOPアンセムのカヴァーや、ジャクソン5の 「Great To Be Here」、ビリー・ジョーンズのダンスフロア・バーナー 「Lookout Baby (Here I Come) 」など、最後までアクセルベタ踏みで駆け抜けます。7inchリリースの多い彼らの楽曲を一挙に楽しめるありがたい一枚。 (AYAM)
Big K.R.I.T.、Gangsta Boo 参加!OutkastやUGK、メンフィス・ラップといった、自身のルーツでもあるサウス・ヒップホップ/R&B をテーマにした、米アーカンソー州リトルロック出身 LA拠点のラッパー Kari Faux の3rdアルバム。2023年リリースですが、とても良いアルバムなのでストックしました。〈drink sum wtr〉から。
ファンク、R&B、ロックと幅広いジャンルを軽やかに横断し、A Tribe Called QuestからESG、J Dillaといった先人たちのスタイルを踏襲するハイブリッドなHIPHOPアルバム。LAのプロデューサーCole Thompson、ヴォーカリスト/ラッパー DaCosta 、Jean Carter によるトリオ Your Grandparents のデヴュー作。ブルックリンの良質HIPHOP/R&Bレーベル〈drink sum wtr〉から。
10年以上トラックメイキングをしているという現在二十代後半の彼ら。バンド・サウンドと、Q-tipやJ Dillaの影響を強く感じさせるビートを駆使したトラックは、まるで90年代を体験したのかなと思わせる貫禄を醸し出しています。パンキッシュな「BAD NEWS」や、アッパーなロック・ナンバー「Met-A-Morphosis」といったロック的なサウンドまで乗りこなす中盤は聴きどころです。「Be Cool」(sample_1)、「All Dem Times」(sample_2)、「DOWN」(sample_3)といったR&Bのソングライティング、ラップも抜群で、新世代の器用さに感動します。推薦 (AYAM)
Nas『Illmatic』、The Notorious B.I.G.『Ready to Die』、Beastie Boys『Ill Communication』とも同い年。ポーランドではヒップホップがまだ黎明期にあり、自国語でラップするという行為がまだ新しかった時代、1994年の先駆的作品が30年を経て同国レーベル〈The Very Polish Cut Outs〉より初のアナログ化。ヒットした「Czujee się lepiey(気分がよくなる)」を含む全18曲。DIYのLo-Fiで実験的なラフな質感に、東欧ローカルのスケールが生む静かなサイケデリア。ラップと詩の朗読、祈りと怒りの間を彷徨うような緊張感のあるパフォーマンスで、何と言っているのかよりも吐き出されたものをぜひキャッチしてみてください。 (足立)
〈STONES THROW〉MADLIBのオルター・エゴでもある 比類なきオルタナティブ・ヒップホップ・プロジェクト、Quasimoto の2005年にリリースされた2ndアルバム『The Further Adventures of Lord Quas』が、Quasimotoのイラストを手掛けるJeff Jank により、新たなアルバムカバーのアートワーク + 厚手のゲートフォールド仕様 + カラー盤の、スペシャルな2LP盤が限定数量でリリース!!当初、Stones Throwのオンラインストアのみでの販売で即完しておりましたが、限定数量にて日本にも流通が実現。
MADLIBがシャイ故のヘリウム吸引系虫声ラップ。ディガーでもある彼のコレクションからサンプルされたロウファイで煙たい揺れのあるビート。ジェームスブラウンのブレイク、レアな70sソウルグループThe Roe-O-Tationのコーラスフレーズが強烈な「Rappcats Pt. 3」(sample_1)や,The Spinners「I Found Love」の最高に沁みるフレーズをループさせ、M.E.D.を迎えた「The Exclusive」(sample_2)など、入手困難な音源からポピュラーなソウル、チリノイズからスクラッチまで、未だ誰も同じ調理をしてもこの味にはならない、代わりの効かないユニークなトラック群。1st『The Unseen』に並ぶ超名盤。 (AYAM)
グローバルなポップミュージックの地位を確立して久しいラップ・ミュージックだが、ラップは英語(アメリカ英語)でなければ米国でヒットすることは難しい。これはK-POPの戦略を見ても自明のことだと思う。アメリカ英語を練習して巧みに操り、ラップ・ミュージックの「アジア」の枠に花を咲かせている韓国のアーティストが多数いる一方で、ローカルの意味を音とリリックに落とし込み、ヒップホップを完全な地元の味に調理してしまう「アジア」のアーティストも存在する。タイのJUU4Eはまさしくその代表的な存在だ。 タイのヒップホップ・シーンにおいてOGとしてリスペクトを受け、独自の位置を確立しているラッパーJUU4E。2019年にリリースされたファースト『ニュー・ルークトゥン』では、stillichimiya/OMKのYoung-Gプロデュースの元、タイの雑食ゲットー歌謡ルークトゥンをヒップホップと折衷、最新のヒップホップであると同時に最新のルークトゥンでもあるという傑作を作り上げた。続く『馬鹿世界』ではサイケデリックかつ、タイ南部の舞踊芸能ロン・ゲンや、日本民謡など意識的な「アジア」の風味を取り入れたユニークな音楽を展開し、コロナ渦中の混沌とした世界を描いた。 これらの流れを継ぐ『イズ』は、コロナを乗り越えて再びパーティーが始まる、開放感に溢れたダンス・アルバムなっている。アルバムの前半6曲は、2023年にデジタルEPとしてリリースされたもので、アップテンポのジャージークラブ、ドラムンベース、ドリルといった「グローバル」のトレンド・ビートにタイの伝統楽器であるケーンのループや「ワンカップ酒」といったローカル局所トピック、そして仏教の世界観に基づく歌詞が結び付けられ、踊りたい衝動と自分の立ち位置を問うてくるような感覚が交互に訪れる。文脈は違うが、デヴィッド・バーンとブライアン・イーノの『My Life in theBush of Ghosts』と同種の感覚だ。後半の7曲は今回が初出となるが、前作『馬鹿世界』収録の「トンブリー丼」のドープな別バージョンや、めでたくタイで解禁されたガンジャをドリルのビートで讃える「タイは吸う」など、前半と同じく開放感に溢れるチューンと独自の詞世界に溢れた内容となっている。前半6曲、後半7曲、そう、合わせて13(ジュウさん)曲! ジュウさん曰く、このアルバムはコロナを乗り越えてみんながまた集まる楽しさを取り戻せたという喜びの感情を内蔵しているとのこと。本当にその通り。爆音でプレイしてパーティーをまたスタートさせよう!
Produced by JUU4E & Young-G Mastering: Takuto Kuratani Cover art: Shinsuke Takagi (Soi48/OMK)
カリフォルニア州ロングビーチ出身のデューサー/ラッパー Seafood Sam 。Snoop Dogg や Curren$y のようにメロウに車内で聴いたり、キャデラックをバウンスさせることに特化した西海岸ヒップホップのサウンドと、彼が多大な影響を受けているというJames Brown、 Bobby Brown、Miles Davis からのインスピレーションが掛け合わされた、決して派手ではないが最新型の西海岸ヒップホップが完成しています。同じく、ヒップホップには留まらず、広いジャンルの音楽オタクたちからも支持を受けるラッパー Pink Siifu が参加しているのも納得です。レイドバックなディスコ・トラック「Saylo」(sample1)から、ネオソウルとジャズのブレンドが心地良い「Lagonda」(sample2)「The Card Players」(sample3)など、西海岸ヒップホップ、ジャズやファンク、ソウルの過去と現在を繋ぐトラック群、上質なバックバンドの演奏(クレジットには見当たらずプレーヤーは不明です)、沢山のレコードを聴いてきた人なんだなと感じさせられます。 (AYAM)