- CD
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- New Release
Isik Kural
Motorcycles and Cherry Wind
PLANCHA / RVNG Intl.
- Cat No.: ARTPL-268
- 2026-10-31
PLANCHAが日本独自CD化/ボーナス・トラック2曲収録/解説・歌詞・対訳付き
イスタンブール出身、現在はグラスゴーを拠点に活動するRVNG常連の才能Isik Kuralのニューリリース。マラケシュの旅から生まれた、フィールドレコーディングを交えたアコースティックなアンビエント、箱庭ドリームポップ、歌心。古代から手渡されてきたフォークロアのような、飴色の美しい音楽です。(足立)
Track List

古代の風景、街角のざわめき、鳥の声…
旅の記憶を牧歌的なアンビエント・ポップへと昇華した、Isik Kuralの新たな傑作。
トルコにルーツを持つ作曲家/ソングライターのIsik Kuralは、10代の頃、ナイロン弦のギターをかき鳴らしながら、偶然耳にした言葉や会話だけを使って遊び心あふれる歌詞を作り、音楽の基礎を築いた。気軽な好奇心から始まったその営みは、後の彼の表現活動の土台となり、音楽を中心とする人生を築くため、マイアミ大学で専門的に学ぶきっかけとなった。
生来の探究心に導かれ、彼はヘルシンキから、現在の居住地であるグラスゴー、そして歴史を秘めたさまざまな土地へと、リズムや古くからの言い伝えを追いながら旅を重ねてきた。とりわけ、古代の面影を残す黄金色の ...もっと読む世界をさまよった経験が、『Motorcycles and Cherry Wind』の感情的な底流を形作っている。
『Motorcycles and Cherry Wind』というタイトルと、本作を動かす精神は、2022年にKuralがマラケシュを訪れた旅にさかのぼる。街の中心部の喧騒を眺めながら、彼が惹かれたのは事実を記録することではなく、音に絡みついた一瞬の感覚を捉えることだった。
本作を初めて聴くと、かつて訪れた街々の温かな記憶が、一枚の映像ではなく、感覚のすべてを伴って押し寄せてくる。踏み固められた土の鉱物的な匂い、村の壁の手触り、穏やかな10月の午後、道端の露店で熱気の下に寄り集まる深紅の果実を、光が柔らかく照らす様子——そうした記憶である。
旅の最中に生まれる記憶は、その瞬間には必ずしも地図上に位置づけられるものではない。しかし、そこから距離を置くことで、新たな模様を見せ始めることがある。『Motorcycles and Cherry Wind』において、Kuralはそうした内面の痕跡を、大切な小物を集めるように収集している。イスタンブールの乗合バス「ドルムシュ」で録音したフィールド・レコーディング、古代リュキアの地で泳いだ後の余韻、ブリッジ・オブ・アランで録音した鳥のさえずり。それらを尽きることのないアーカイヴとして蓄積し、熟練した収集家のように何度も立ち返る。
彼はそれらを急ぐことなく一つひとつ選り分け、新たな注意をもって耳を傾ける。かつては見逃していたかもしれない視点を発見した後、その貴重な糸を、緻密な質感を備えた空気感豊かなアレンジへと織り込んでいく。ピアノの鍵盤、ギターのフレーズ、木管楽器、さらには伝統的な記譜法によって書かれたアレンジまでもが幾層もの音の中に組み込まれ、アルバムに精神的で、ほとんど超越的ともいえる響きを与えている。
『Motorcycles and Cherry Wind』のすべての楽曲は、先人たる音楽家たちへの賛歌である。彼らから借り受けた旋律は、いくつもの人の手を通り抜けるたびに、新たな意味と目的を獲得していく。
本作には9人の音楽家が参加しており、その名前と出身地を並べるだけでも、一枚の地図が浮かび上がる。
Gabriel Bastos(ヴァイオリン、ヴィオラ/ブラジル)
Noelia Diaz(チェロ/アルゼンチン)
Giulia C(フルート/イタリア)
Sasko Temelkoski(バス・クラリネット/北マケドニア)
Teresa Castanon(クラリネット/スペイン)
Hannah Gobbett(クラリネット/イングランド)
Niki Yaghmaee(ヴァイオリン/ドイツ)
Ezgi Daloglu(フルート/イスタンブール)
Loris S. Sarid(クラリネット/グラスゴー)
各地に散らばるアンサンブルの地理的背景と文化的な参照点は、グラスゴーで一つに結びつき、『Motorcycles and Cherry Wind』の中で一つの形へと収束する。その中心に立つKuralは、静かでありながらも確かな深みへと楽曲を導いていく。
Kuralは、現代的なスタジオでの抽象的な制作を通じて、忘れられかけた伝統の断片を生かし続ける。そして聴き手を、一つの生きた遺物の中へと引き込んでいく。それは、昨日の世界を今日の手の中に封じ込めたものだ。その起源がどこにあるのかよりも、そこに残り続ける温もりの方が重要なのである。